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9月25日(日)に行いました「第七回氷川短歌賞選評会」の受賞作品を発表します。
大賞と選者賞の作品には、先生方からコメントをいただきました!
最後には先生方が皆さんと同じテーマで詠んだ短歌もあります。ご覧ください。 

☆大賞☆

 透明な紋白蝶が飛ぶように母の背中を団扇で扇ぐ   上野りな

【大松先生からのコメント】

〈飛ぶように〉は、「飛んでいる様子で」とも「飛ぶために」とも解釈できる。ここでは前者の意味だと思うが、後者のニュアンスも感じられる。小さな蝶の飛翔に影響を与えないくらいのやさしさで、うちわをゆったりと上下させる。そこには会話よりも濃く通じ合う何かがあるかもしれない。風を送る目的よりもコミュニケーションの手段。お互いの感謝と愛情などが、見えない蝶を介してやりとりされている感じもする。

【東先生からのコメント】

まぼろしの紋白蝶が、母の背中と団扇の間にふわふわと舞っている。はかなくて、美しい情景がうかぶ。蝶がとぶような、やさしい風になるように、繊細に気を使って風を送っている気持ちが伝わる。母と主体との間に切ない情感が滲む。言いたくても言えない何かがあるのではないか、など、いろいろと想像をふくらませたくなる余白がある一首である。「明」の題から引き出された「透明」だと思うが、「蝶」に結びつけたことで詩情が生まれた。

☆選者賞 大松達知賞☆

靴下の片っぽときに行方不明探せ昨日と今日の隙間を   浮沈子

【大松先生からのコメント】

短歌はリズムが半分、意味が半分と言われる。これは全体的に弾むようなリズムがいい歌。特に「探せ昨日と」の句跨りによって、「昨日と今日の隙間」という存在しない時空に転がり込んでゆく様子を体感させてくれる。「不思議の国のアリス」みたいだ。卑近な素材と平易な用語とよくある場面を扱いながら、ふとしたファンタジーの世界を意識させるのもいい。

☆選者賞 東直子賞☆

地下鉄が地上にぬける明るさに受け容れられて私を生きる   月館桜夜子

東西線や丸ノ内線など、地下鉄に分類される路線でも地上を走ることがある。列車ごと地上に出るとき、運命に導かれるような感じがして、私もとても好きな一瞬である。あの感じに「明るさに受け容れられて」というフレーズを与えた点がすばらしい。この言葉によって、明るさの中に身を置くだけでなく、心理的にも明るくなれたことが伝わる。又、明るさの表裏として、心理的にも暗かった部分があり、そこを抜けたのかと思う。奥行きのある一首。

☆氷川賞(来場者による投票)☆

巻き貝のなかを明るくするように母は美大はむりよと言った   鳥さんの瞼

                                     大賞

                                  大松達知賞

                                   東直子賞

                                    氷川賞

大松先生、東先生から景品贈与です。おめでとうございます!

     大松達知先生(前列向かって右)と東直子先生(前列向かって左)

最後は希望された参加者の方と一緒に記念撮影をしました。
受賞された皆様、おめでとうございます!  

   

☆先生方の短歌(題詠「明」)☆

きまじめな副校長の眉のような(やま)のあるある明朝書体     大松達知

絆創膏はがしたあとの皮膚明るく転校生が名前を告げる    東直子

ご参加いただき本当にありがとうございました!
今回初めて短歌を詠まれた方もたくさんいらっしゃいました。
皆様もこの機会に是非、短歌に親しんでいただけると嬉しいです。

次回の開催をお楽しみに!